研究

大豆の落ちこぼれを救う遺伝子「pdh1」。

大学院農学研究院

 大豆の莢(さや)のはじけを抑える遺伝子が、農研機構、北海道大学、農業生物資源研究所、香川大学の共同研究で明らかになりました。莢がはじけて豆を飛散させる性質は、野生大豆にとっては必要ですが、作物の場合、収穫量の損失につながります。日本では伝統的に大豆の収穫を手刈りでおこなってきたことと、収穫期が比較的湿潤なことから、これまで裂莢(れっきょう)は問題視されていませんでした。しかし、栽培が大規模化されてコンバイン収穫が一般的になり、温暖化の影響で秋に乾燥することもたびたびあるため、裂莢性が無視できなくなっています。
 今回明らかになったのは、第16番染色体上にある「ディリジェント様タンパク質遺伝子」が壊れ、その機能を失ったものが、はじけを抑える難裂莢性遺伝子になることです。発見にともない、正常な機能をもつ易裂莢性遺伝子をPdh1(Pod dehiscence 1)、難裂莢性遺伝子をpdh1と名付けています。日本の主要品種のうちpdh1をもつのは「ユキホマレ」のみですが、中国では約半分、北米では90%以上の品種がpdh1型で、この遺伝子が乾燥地域での栽培や大規模生産を可能にしているとも言えます。現在、農研機構では「サチユタカ」「フクユタカ」に難裂莢性を導入した品種・系統を育成しており、将来、より効率的な品種が農業生産性を高めると期待がかかります。

大豆の落ちこぼれを救う遺伝子「pdh1」。

生物多様性を守るためのコンブ林調査。

北方生物圏フィールド科学センター

 近年、海洋生態系の劣化は著しく、人間の活動は外洋や深海にまで影響を及ぼしているとされています。しかし、地域的なデータは不十分で、劣化の原因解明や対策の立案を難しくしていました。そこで2011年度より、独立行政法人 海洋研究開発機構を中心に、複数の研究機関が連携して「海洋生態系における生物多様性損失の定量的評価と将来予測」を実施。本学からは北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授、宮下和士教授、四ツ倉典滋准教授らが共同研究に参加して、海藻藻場の分布を推定し、重要海域の選定をおこないました。
 研究では北海道沿岸のコンブ藻場について、独自性と希少性、生物生産など7つの判定基準を用いて評価。重要な海域として、道南地方の東部、道東地方の南部、道北地方の北西部を選定し、コンブ目の多くが水温と波あたりから影響を受けている傾向を確認しました。サンゴ、アマモなどに関する調査も他の研究機関によっておこなわれ、将来の環境変動を考慮した保全の必要性が示されました。日本は世界で6番目に広い管轄海域を保有し、生物多様性の保全において世界をリードすべき立場にあります。今回の研究結果は環境政策の目標設定・達成に貢献すると期待されます。

生物多様性を守るためのコンブ林調査。

東日本大震災被災地の集団移転計画を支援。

大学院工学研究院

 2011年3月11日、東日本大震災の際、津波に遭った宮城県気仙沼市小泉地区。ここでは同年4月、迅速に「小泉地区の明日を考える会」が結成され、100世帯を超える住民が集団移転計画をスタートさせました。計画を継続的に支援しているのが、コミュニティ形成について研究する工学研究院の森傑(すぐる)教授です。森教授は1993年7月の北海道南西沖地震の後、奥尻島でどのように高台移転が進められたかを調査をした経験があり、復興計画をつくるときには、コミュニティを持続する観点が必要と考えます。そこで小泉地区では「30年後も続く町づくり」を訴え、住民参加型のワークショップを定期的に催して、合意形成を重視しながら移転計画を支援しています。
 なお、30回に及ぶフォーラムやシンポジウムを開催するなど、継続的な支援活動が評価され、「2013年度 人間・環境学会 学会賞」に森教授の「気仙沼市小泉地区における防災集団移転の計画支援活動」が選定されています。

東日本大震災被災地の集団移転計画を支援。

アスファルト廃材で地盤を強く。

大学院工学研究院 環境フィールド工学部門

 持続可能な社会を構築する上で、産業廃棄物を土木材料として再利用することは重要です。大学院工学研究院 環境フィールド工学部門の横濱勝司助教らは、2014年度の北海道ガス大学研究支援制度を生かし「アスファルト舗装廃材を活用した地盤強度増加効果の検証」をおこないました。
 研究では、使用後のアスファルト舗装を粉砕・分級した再生材と、細かく粒の大きさが揃った豊浦砂を使用しました。これらの混合材料から作った供試体について、デジタルマイクロスコープで断面観察をおこなう他、上下および側面から圧力をかける「圧密排水三軸圧縮試験」(CD試験)を実施。再生材の最大粒径や混合率の違いが強度やひずみ量に及ぼす影響について調べました。実験の結果、アスファルト廃材と砂を混合すると、顕著な強度低下はなく、破壊時のひずみ量は増加し(言い換えると、破壊しにくい性質になり)、容易な作業で粘り強い地盤を構築することが可能になると判明しました。この研究成果は2015年に発表される『第11回環境地盤工学シンポジウム論文集(地盤工学会)』への掲載も決定しています。

アスファルト廃材で地盤を強く。

南極で棚氷の下を直接観測。

北海道大学低温科学研究所

 低温科学研究所の杉山慎准教授を中心とするグループは、南極昭和基地近くのラングホブデ氷河について国立極地研究所と共同研究を実施。氷河の末端が海に浮いた棚氷(たなごおり)の熱水掘削に成功し、厚さ400〜430mの氷の下を直接観測しました。
 観測の結果、以下3点の重要な発見がありました。①棚氷の下には深さ10〜24mの海水層が広がっている。②海水層は氷の融点よりも0.7℃高い水で満たされている。③海水層にはオキアミ、魚類、ワラジムシの一種などの生物が活動している。これら研究の成果は、激変する南極氷床の変動予測に貢献すると考えられます。
◎掘削の様子や掘削孔内で撮影した映像は、以下のURLにて一般公開されています。
http://wwwice.lowtem.hokudai.ac.jp/~sugishin/research/ hokudai2/langhovde/langhovde_movie.html

南極で棚氷の下を直接観測。

『IPCC第5次評価報告書』の海洋調査部分を執筆。

北海道大学低温科学研究所

 『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書』に関する『統合報告書』が2014年11月に発行されました。そのベースとなった『第一部会報告書』の第3章「観測〜海洋〜」の主執筆者を低温科学研究所の青木茂准教授が務め、「1971〜2010年において海洋の上部で水温が上昇していることはほぼ確実である」「1992〜2005年において3,000m以深の海洋深層で水温が上昇している可能性が高い」といった調査結果を掲載しています。
 なお、本学地球環境科学研究院では2014年8月〜9月に公開講座「IPCC第5次評価報告書を読み解く」(全6回)を開催。「地球環境序論」「人間活動に伴って排出されたCO2の行方」などのテーマで講演がおこなわれ、青木准教授も「地球温暖化は海の温暖化」と題して話をしました。

『IPCC第5次評価報告書』の海洋調査部分を執筆。

北海道の希少野生動植物を未来へ。

地球環境科学研究院

 北海道では特有の生物相による多様な生態系が形成されていますが、近年、野生生物の減少が進み、希少な「種」の保護を通じて生物多様性を守ることが緊急の課題となっています。
 地球環境科学研究院の大原雅教授らは2000年より「北海道希少野生動植物対策検討委員会」の委員を務め、絶滅のおそれがある種の現状を的確に記録した『北海道レッドデータブック』を作成し、対策が急がれる植物を保全する活動を進めています。さらに同委員会では、保全対象種を指定した後、地方自治体と協力して生育状況のモニタリング調査を実施し、貴重な自然を未来へつなげる活動を着実に展開しています。

北海道の希少野生動植物を未来へ。

草資源を利用して「北大方式」で牛肉生産。

北方生物圏フィールド科学センター

 北方生物圏フィールド科学センターに所属する静内研究牧場(新ひだか町/470ha)では、1970年代から「北大方式」ともいうべき草主体の牛肉生産システムを構築してきました。夏季は蹄耕法を採用し、傾斜地で牛を放牧して野草を採食させると同時に、牧草を播種して種子を牛の蹄で地表に圧着させ、野草地を牧草地に変えていきます。その結果、傾斜地は写真のような美しい牧草地に変わりました。冬季は舎飼いで牧草やコーンを発酵させたサイレージを給与します。輸入穀類主体の配合飼料は肥育の仕上げ段階で与えるのみで、その量は通常の1/4〜1/5程度(約1t/頭)にすぎません。
 以前、この牧場では、荒れ地に強いとされるヘレフォード種を飼養していましたが、現在は放牧に強いとされる日本短角種が飼養され、評判のよい赤肉が生産されています。

草資源を利用して「北大方式」で牛肉生産。

"ありえない組み合わせ"で耐熱合金を創成。

大学院工学研究院

 CO2排出量削減につながる天然ガスLNG火力発電の高効率化をめざして、タービン入り口温度の上昇を実現させる新しい耐火金属基合金の開発が国内外で進められています。工学研究院の三浦誠司教授は「BCC(体心立方格子)構造」の金属をいくつも混合した新たな物質群「耐火金属基BCC高濃度固溶体」を基礎とし、金属間化合物を組み合わせることによって強度・靭性・耐酸化性を高めた複合材料の開発に挑戦。
 この新規概念の下では、選択できる化合物の選択肢が増加し、合金設計の自由度も飛躍的に高まります。従来ありえない組み合わせとされた「ニオブ−チタン−モリブデン−タンタル−バナジウムなどからなる耐熱合金」が実用化されれば、その卓越した性能から、エネルギー供給の分野における日本の国際競争力向上に寄与すると期待されます。

銀を触媒に使い、排気ガスを浄化。

触媒化学研究センター

 これまで自動車排ガス浄化には主に白金系触媒が採用されてきましたが、価格と資源量の観点から、脱貴金属触媒への要望が高まっています。触媒化学研究センターの清水研一教授は名古屋大学の研究者とともに、銀(Ag)に注目し、従来の「金属ナノクラスター触媒」の合成法とは逆のアプローチで代替触媒の開発に取り組んでいます。
 Agは酸素分子と強固に化学吸着できません。しかし、微粒子にして酸化物で取り囲むことにより、高い浄化作用が働くことを清水教授らは実証し、ディーゼル脱硝触媒における分子設計の概念を確立しました。一連の報告は国内外での追従研究を誘起し、現在「銀アルミナ触媒」が実用化の有力候補とされています。

銀を触媒に使い、排気ガスを浄化。